願いの先へ
冷たい風が吹き、体に入ってくる空気までもが冷たく、
1呼吸する事に体の熱を取られ、体の奥底から冷え吐く息は白くなり、
より寒さを感じ、マフラーを隙間の無い様に直し、早足で歩き、家を目指す。
弾む息は絶える事なく白い息は空へと流れ、
その先には青白く輝く星があった。
もう、1番星が出る時間なんだ・・・
どの星より光り輝く星を見ながら、
フッと思い出すのは先程の会話。
朝から同じマンガの話。
どのキャラが好きだとか。
この話が1番好きだとか・・・
尽きる事が無い話は、部活終了後、
1時間程盛り上がり、ふいに鳴ったケータイ音で話が途切れ
時計を見れば、とんでもない時間になっており、慌て帰宅をしだした。
楽しかったなぁ・・・
思い出し笑いをしながら、ポケットに手を入れ、紙を取り出し、
書かれているアドレスを見て微笑む。
『異世界パラレルて言って、本の中に入り込んじゃう話なの』
楽しそうに話す友の話を黙って聞いていれば、
『で、自分は先の事が解ってるわけじゃない』
合間に頷けば、
『引っ掻け回さない様に、話を違う方に進まない様に助言したり、
手助けしたりする話なの。でね・・』
意味ありげに笑い、顔を近づけ
『青学だけじゃなく、他校とも仲良くなって、
そして、恋愛して、彼女になる話よ!』
小さかった声が段々大きくなり、最後には身振り手振りで説明され、
勢いに飲まれ、頷く事しか出来なかった。
『で、コレが私のオススメサイトさん。
絶対良いから見てね』
笑顔と共に渡された紙を眺め、熱弁をした友の思い出し、
動かしていた足をいつの間にか止め、星を見ていた。
もし・・
もし、話みたいにテニプリ世界に入れたら、
どんなに楽しいだろう・・・
入れたら・・・
ううん・・入りたい。
星に願いをかける。
寒さも忘れるぐらい、真剣に願いをかけていたのか、
頬に当たった風に寒さが甦り、
止めていた足を動かし家へと急いだ。
息を乱し、カギをカバンから取り出し、鍵穴に差し込んだ後、
列んだ番号が書かれているボタンから4つ押せば
自動扉が開き中へ入っていく。
上へて指示を出すボタンを押し、エレベーターを呼び、
開いた扉を潜り、回数ボタンと閉と書かれたボタンを押し、
上へと動いている音を聞き、疲れを訴える体を壁に凭れさせた。
外、寒かったなぁ・・・
暖房が効いているはずの室内でも、
暖かみは無く寒さを感じ身を震わせた。
芯から冷えてたんだ・・・
中々暖まらない体の事を思いながら、鈍く重たく感じた頭を数回降り、
視線を上げれば点灯しているはずの電気が付いてなかった。
押し忘れたのか・・・
壁から離れ、ボタンを押した瞬間
ガタン・・
左右に揺れる振動を感じた後、落ちていく感覚が足元から伝わった。
「ちょ・・・」
待って。
声に出ない言葉が唇から作られるが、重力に従う様に止まる事は無く、
更に落下するスピードが上がる。
「ええっと・・・・こういう場合は・・
地面に付く瞬間にジャンプすれば良かったんだっけ?」
落下している現実を受け入れる事が出来ず、
混乱する頭の中で浮かんだ言葉を声に出す。
「あれ・・?しゃがむのが正しいんだっけ?」
混乱してはいるものの何処か冷静な部分が残っており、
その部分から考えが浮かんでは声に出し、何かを紛らしていた。
「何か起こった時は、警備会社に連絡すれば良いんじゃん!」
揺れで歩く事さえ困難な中、壁に体を預けながら進み、辿り付くも、
目に入ったボタンを見て気が付いた事に、声が零れた。
「最初はボタンを押し忘れてて動いて無かったんだよね・・・
それで、押したから下がって・・・」
自分の声が耳に入り、言葉の意味を頭で理解していく。
「地下の無いマンションで落ちる・・て事は・・・
何処に落ちるの・・・・?」
感じるスピードと時間を頭の中で計算してゆく。
考え付く答に、顔を青ざめ、震え出した体は立っている事が出来ず、
膝から座り込み、目を閉じ、震える手は頭を抱え込んだ。
変わる事のないスピード。
止む事の無い、落ちていく事を知らせる空気の音。
見え、聞こえ、感じる総てのモノの恐怖に悲鳴を上げるしか出来なかった。
落下に身を任せるしかなく、悲鳴を上げれば、
突然の息苦しさに目を明け、
入ってくる景色に声を出すが、
音にはならず、気泡として消えていく。
苦しい・・・
呼吸の出来ない体は空気を求め、手でもがく。
上に上がっているのか、
沈んでいるのか解らず、
持ってる力を総て使い、水を押す。
「女子高生、真冬に水死体で発見!!
なんて見出しになってたまるかぁ!」
歯を食いしばり、
動かせるだけ腕を動かせば何か当たる感触に手を延ばせば、
引っ張られ、全身が水から離され、
肺の中に空気が入り意識が冷静に戻り視界に色が入ってくる。
茶色の髪
冷たい印象を受ける目
整った顔立ちはどこかで見た事のある顔に、驚き、
名前を言いかけるが、急激に入って来た空気に咳込んだ。
なんで!?
なんでココにこの人がいるの!?
なんで・・手塚国光がココに居るのよ!?
咳込み、息苦しく涙が出る中、声として出る事の無い言葉は
心と頭を混乱へと導いた。